研究紹介

触媒法を利用した有用食品成分の製造

 固定化酵素の触媒作用を利用して、ビタミンC類縁体やポリフェノール配糖体などの水溶性抗酸化物質とEPAやDHAなどの機能性脂肪酸との縮合反応により、抗酸化性乳化剤を位置特異的に合成することができます。そしてこれらの反応系について、反応工学の視点から、回分反応における至適反応条件の決定や、連続槽型および管型反応器による連続生産の運転条件が選定され、生産性が比較できます。さらに、生成物の界面科学的特性や食用油脂に対する抗酸化特性が速度論的に解析・評価されます。また、アルカリ環境や亜臨界水中において、化学的な触媒作用を受けた糖の異性化反応が進行します。これらを踏まえ、近年、非・抗う蝕効果を有し、食後血糖上昇抑制作用などの様々な生理活性が確認されている希少糖を低コストで効率的に合成する手法の開発にも取り組んでいます。

 

機能性素材の食品分散系における高度利用

 超高齢者社会を迎え、これまで以上に健康の維持と増進に寄与する食品が求められています。機能性に優れた脂質の高齢者向け食品開発への適用を指向して、不飽和脂質を含んだ高粘性ハイドロゾルおよびハイドロゲルの作製と、その化学的および物理的安定性の改善を図っています。また、加工食品には多くの分散構造が存在し、多様な手段と環境において使用されています。液状脂質や柑橘由来などのテルペノイドを含んだ植物性フレーバーを含んだ水中油滴(O/W)型エマルションや、それを噴霧乾燥に適用してマイクロカプセルを調製し、それぞれの系における脂質の酸化安定性や香気成分の保持特性、さらに凍結・解凍を経た保存操作の影響について検討しています。

 

食品素材および加工食品の保存性改善と未利用素材の資源化プロセスの構築

 冬季に収穫され夏季には市場で見つけにくい国産レモンの保蔵安定性をカルシウム水を適用することで改善を図ることが可能です。また、レモン果皮を分画し、用途に応じた利用法の検討を行っています。特に利用しにくい固形残渣については、加水分解酵素や亜臨界水を用いた可溶化を試み、有用成分の取得が図られています。また、食品加工残渣である醤油粕や酒粕への消化酵素の加水分解作用に高圧操作を適用することにより、より短い時間でレジスタントスターチやレジスタントプロテインを得ることができます。さらに、糖水溶液によるイチゴ果実の減圧含浸処理により、調製されたイチゴジャムの色調安定性が向上することが示され、その最適な操作条件が決められました。