研究内容

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植物のマイクロRNAに関する研究

 分子生物学にはセントラルドグマと呼ばれる概念があります。これによると、ゲノムDNAにコードされた遺伝子情報がメッセンジャーRNAに転写され、タンパク質に翻訳され、出来上がったタンパク質は細胞内外で多様な機能を発揮し、生命活動を支えるわけです。このセントラルドグマにおいては、RNAはDNAとタンパク質の橋渡しをする中間産物的な存在として扱われています。ところが近年の研究により、RNAは転写からタンパク質合成、タンパク質輸送までの遺伝子発現のほぼ全ての段階に関与する機能性分子であることも明らかになってきました。RNAを介した新たな遺伝子発現制御が次々と解明され、特にノンコーディングRNA(noncoding RNA、ncRNA)と総称される、タンパク質の情報をコードしていないRNAが生体内には大量に存在し、生命現象を理解する上で非常に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。一般的に、生物種が高等になるほど多くのノンコーディングRNAを持っており、より複雑な高次機能を担っていると考えられています。 ncRNA

 

 

 

 

miRNA

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真核生物において20-24塩基からなる低分子RNA(small RNA)はノンコーディングRNAの代表的なもので、RNAサイレンシングまたはRNAi(RNA interference)と呼ばれる機構によって遺伝子発現制御に重要な役割を果たしています。その中でも、20-22塩基からなるマイクロRNA(microRNA、miRNA)は、植物においては発達・分化の制御、環境ストレス応答、病害応答、栄養応答など、非常に多岐にわたる生理機能を制御する重要な遺伝子発現制御因子であることから、活発に研究され始めており、また人工miRNAを用いた特定の遺伝子の機能抑制にも応用されてきています。miRNAは部分的なヘアピン構造を取る前駆体RNAとして転写され、Dicer-Like 1(DCL1)と呼ばれるRNA分解酵素によって20-22塩基長のRNAに切断されます。生成したmiRNAはArgonaute 1(AGO1)と呼ばれるタンパク質と複合体を形成し、標的mRNAに塩基配列依存的に結合し、mRNA分解や翻訳抑制を引き起こすことで遺伝子発現制御が行われます。DCL1やAGO1以外にもHyponastic leaves 1(HYL1)、Serrate(SE)、Cap binding complex(CBC)など様々なタンパク質がこの過程で機能することが、シロイヌナズナの研究を中心にして明らかにされています。私たちはこれらのタンパク質を分子生物学・細胞生物学・生化学などの様々な手法を用いて解析しそれらの分子機能を明らかにし、得られた知見を細胞・個体レベルでの現象に還元することで、植物におけるmiRNA生成・機能を包括的に理解することを目指しています。
【発表文献】
Iwata Y, Takahashi M, Fedoroff NV, Hamdan SM (2013) Dissecting the interactions of SERRATE with RNA and DICER-LIKE 1 in Arabidopsis microRNA precursor processing. Nucleic Acids Res 41:9129-9140

Hirata R, Mishiba KI, Koizumi N, Iwata Y (2019) Deficiency in the double-stranded RNA binding protein HYPONASTIC LEAVES1 increases sensitivity to the endoplasmic reticulum stress inducer tunicamycin in Arabidopsis. BMC Res Notes 12:580