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栄養価を高めたナスの作出

 2010年には世界の耕地の1割以上の面積で遺伝子組換え作物が栽培されました。その面積は日本Eggplant_image国土の約4倍に当たります。そして食料自給率の低い日本は大量の遺伝子組換え作物を輸入、消費しています。しかし、日本では食用目的の遺伝子組換え作物を作出する研究開発は非常に限られています。消費者が遺伝子組換え作物を嫌うので、開発しても受け入れられないという考えが多いからです。その結果、日本の研究開発力が衰えていくことが懸念されます。そこで、遺伝子組換え技術の有効性を示すため、栄養価を高めたナスを作出する研究を始めています。
 具体的にはリコピンやβカロテンといった健康に良いカロテノイドを実に蓄積するナスを作ろうと考えています。ナスは私たち日本人にとって馴染みの深い野菜で古くから食されており、様々な料理法があります。しかし、残念ながらナスにはこれといった栄養がありません。もし、トマトに多く含まれるリコピンやニンジンに多く含まれるカロテン(カロチン)を含むナスが出来れば、栄養価が高まると期待できます。ナスの学名はSolanum melongena、トマトはSolanum lycopersicum、ジャガイモはSolanum tuberosumで、どれもナス科ナス属に属します。遺伝子の配列もトマトとナスあるいはジャガイモがとても良く似ていることも分かってきました。ですからリコピンを沢山ためるトマトの性質をナスに導入することはそんなに難しくないかもしれません。
 実は、お米にβカロテンを作らせることはすでに成功しています。βカロテンをためるお米は黄色い色をしていて「ゴールデンライス」と呼ばれています。βカロテンは私たちの体内でビタミンAに変換されます。私たち人間はビタミンAを作ることが出来ないので、βカロテンが欠乏するとビタミンA欠乏症になります。日本では栄養失調は殆ど見られませんが、世界の多くの国ではビタミンA欠乏症などの栄養失調で失明したり、死亡したりする子供が少なくありません。このような子供達を救うためにゴールデンライスは開発されました。
 ゴールデンライスのようにβカロテンを含むナスが出来れば栄養失調の改善に役立つかもしれません。ナスはアジアやアフリカなどの途上国で多く食されているからです。日本でもリコピンやβカロテンを含むナスは歓迎されるかもしれません。最近、様々な色のピーマン(スーパーではパプリカと呼ばれることが多いようです)が売られていて人気があるようです。これらのピーマン(パプリカ)は、遺伝子組換え技術で作られたものではありませんが、品種改良によって作られたもので、当然遺伝子の組成は変わっています。
 遺伝子組換え技術を用いた場合には、これまでの品種改良とは違うという理由で敬遠する消費者も少なくないかもしれません。しかし、すでに私たちは多くの遺伝子組換え作物を消費していますし、これからも私たちの生活に遺伝子組換え作物は益々重要になってくるでしょう。日本が、遺伝子組換え作物を消費はするが、品種開発や栽培はしないという選択肢を選ぶのか、遺伝子組換え技術を私たちの生活に役立てることを選ぶのか、国民の皆さんに問いかけるために遺伝子組換え技術の可能性を提示する研究を行いたいと考えています。