発表論文

2019年

Mishiba KI, Iwata Y, Mochizuki T, Matsumura A, Nishioka N, Hirata R, Koizumi N (2019)
Unfolded protein-independent IRE1 activation contributes to multifaceted developmental processes in Arabidopsis.
Life Science Alliance 2:e201900459 [Open Access]  [プレスリリース]
【解説】本研究では、これまでその機能が不明であったシロイヌナズナのセンサードメインを持たないIRE1Cに着目した。ire1c変異体やire1a ire1c二重変異体では、その表現型やIRE1依存的な小胞体ストレス応答に野生型との違いはみられなかったが、ire1a ire1b ire1c三重変異体は致死になった(下図)。さらに、ire1a ire1b二重変異体でire1c変異をヘテロに持つ個体(ire1a ire1b ire1c/+)は生育遅延が認められ、ire1c変異は雄性配偶子を通して次世代に伝達されなかった。これらのことから、IRE1Cは雄性配偶子形成やその他の発達過程に関与することが示唆された。そこでire1a ire1b ire1c/+変異体にセンサードメインを欠損したIRE1B(ΔLD)を導入したところ、表現型が回復した。このΔLDは小胞体ストレスでは活性化されず、グリセロール処理により植物体の飽和脂肪酸を増加させるとRIDDを誘導することが判明した。同様の結果は、CRISPR/Cas9によりIRE1B遺伝子のセンサードメイン領域を欠損させたire1a ire1c二重変異体でも確認された。動物や酵母などでは膜脂質の飽和化によりセンサードメイン非依存的にIRE1が活性化されることが知られているが、植物でも同様の活性化機構を持ち、それが発達過程に重要な役割を持っている可能性が示された。
 IRE1 は異常タンパク質をセンサー領域で感知して小胞体ストレス応答を誘導する。一方、IRE1 は小胞体ストレス応答だけでなく、生物の発達にも関わることが知られていたが、具体的にどのような働きをするのかは良く分かっていなかった。本研究により、シロイヌナズナのセンサー領域を持たない IRE1C が花粉形成などの発達に関与することが明らかになり、発達過程で異常タンパク質が作られなくても IRE1 が働くことを証明した。分泌タンパク質が大量に作られる動物組織では、IRE1が働くことが報告されている。従来は、この時に異常タンパク質が作られることでIRE1が働くものと考えられていた(下図、中央)。本研究では、センサー領域を持たない(異常タンパク質を感知出来ない)IRE1が植物の発達過程で働くことが明らかになったことから、発達の過程で異常タンパク質が作られなくてもIRE1が働く仕組みが予想された(下図、右)。


Hirata R, Mishiba KI, Koizumi N, Iwata Y (2019)
Deficiency in the double-stranded RNA binding protein HYPONASTIC LEAVES1 increases sensitivity to the endoplasmic reticulum stress inducer tunicamycin in Arabidopsis.
BMC Research Notes 12:580 [Open Access]

Hirohata A, Sato I, Kaino K, Iwata Y, Koizumi N, Mishiba KI (2019)
CRISPR/Cas9-mediated homologous recombination in tobacco.
Plant Cell Reports 38:463-473 [PubMed] [SharedIt]
【解説】本研究ではCRISPR/Cas9によるタバコ(Nicotiana tabacum L. cv. SR-1)内在遺伝子の相同組換え(HR)への効果を、複数のT-DNA(T-DNA1~3)を持つバイナリーベクターを用いて検証した。T-DNA1には単独では機能しないが、HRによりクロルスルフロン(Cs)耐性を付与するタバコの改変アセト乳酸合成酵素(SuRB)遺伝子ΔSuRBW568Lが含まれる。またT-DNA1の相同領域間にはハイグロマイシン(Hm)耐性遺伝子が挿入されている。T-DNA2にはCas9遺伝子と、SuRBSuRA)およびAn2遺伝子を標的とする2つのgRNAが含まれ、T-DNA3にはHRによりアントシアニンの蓄積が誘導される改変An2遺伝子が含まれる。葉切片をアグロバクテリウム感染させた後にHmとCsを添加した培地で選抜した結果、複数の耐性カルスやシュートが得られた。これらのゲノムDNAを解析した結果、T-DNA1のみを持つベクターからはΔSuRBW568LのHRは観察されず、T-DNA1とT-DNA2を持つベクターからは9系統、T-DNA1~3を持つベクターからは2系統でHRが確認された。これら11系統ではT-DNA1とT-DNA2のゲノムへの挿入も確認されたことから、ゲノムにランダムに挿入されたT-DNA1と内在SuRBもしくはSuRA遺伝子とのHRが、CRISPR/Cas9による標的配列の切断により誘導されたものと推定された。一方、T-DNA1~3全てのゲノムへの挿入が確認された系統を解析した結果、T-DNA3と内在An2遺伝子とのHRは検出されなかった。


2018年

Iwata Y, Iida T, Matsunami T, Yamada YMishiba KI, Ogawa T, Kurata T, Koizumi N (2018)
Constitutive BiP protein accumulation in Arabidopsis mutants defective in a gene encoding chloroplast‐resident stearoyl‐acyl carrier protein desaturase.
Genes to Cells 23:456-465 [PubMed]

Matsuda M, Iwata Y, Koizumi N, Mishiba KI (2018)
DNA double-strand breaks promote endoreduplication in radish cotyledon.
Plant Cell Reports 37:913-921 [PubMed] [SharedIt]
【解説】本研究では、近年シロイヌナズナの根端や培養細胞において報告されたDNA二本鎖切断(DSBs)による核内倍加の誘導(Adachiら、2011)が根端以外の組織でも生じるかを検証するために、カイワレダイコン(Raphanus sativus L. var. longipinnatus Bailey)をはじめとする数種の植物を用いて、DSBsが子葉や胚軸組織の核内倍加に及ぼす影響について調査した。DSBsを誘導するために植物組織にUV照射を行い、フローサイトメーターにより照射組織の倍数性細胞の頻度を解析した。その結果UV照射量の増加に伴い、子葉組織で高次倍数性細胞の頻度が増加した。同様の傾向は他のアブラナ科植物種でも認められた。一方、胚軸ではUV照射により高次倍数性細胞の頻度が減少し、子葉とは相反する効果が認められた。次にブレオマイシン系の抗生物質で、DSBsを誘導することが知られているゼオシンをカイワレダイコンに処理し、子葉組織の倍数性細胞の頻度を解析した。その結果、ゼオシン処理により高次倍数性細胞の頻度が増加したことから、子葉組織においてはDSBsによる核内倍加の誘導が示唆された。

総説等

Ozgur R, Uzilday B, Iwata Y, Koizumi N, Turkan I (2018)
Interplay between the unfolded protein response and reactive oxygen species: a dynamic duo.
Journal of Experimental Botany 69:3333–3345 [PubMed]

Tabara K, Iwata Y, Koizumi N (2018)
The Unfolded Protein Response.
In: Chris Hawes, Verena Kriechbaumer Eds., The Plant Endoplasmic Reticulum, Methods and Protocols, Springer, pp 223-230 [Springer Link]


2017年

Iwata Y, Nishino T, Koizumi N (2017)
Overexpression of the endoplasmic reticulum stress-inducible gene TIN1 causes abnormal pollen surface morphology in Arabidopsis.
Plant Biotechnology 34:173-176 [J-STAGE]

Iwata Y, Yagi F, Saito S, Mishiba KI, Koizumi N (2017)
Inositol-requiring enzyme 1 affects meristematic division in roots under moderate salt stress in Arabidopsis.
Plant Biotechnology 34:159-163 [J-STAGE]

Shimada A, Okumura A, Yamasaki S, Iwata Y, Koizumi N, Nishihara M, Mishiba KI (2017)
A 64-bp sequence containing the GAAGA motif is essential for CaMV-35S promoter methylation in gentian.
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) – Gene Regulatory Mechanisms 1860:861-869 [PubMed]
【解説】本研究では、リンドウ(Gentiana triflora×G. scabra)に導入した35Sプロモーターの配列特異的なDNAメチル化による発現抑制機構を調査した。これまでの研究により、リンドウに導入した35Sプロモーターのエンハンサー領域において、新規(de novo)メチル化が高頻度に生じる2つの領域(-298から-241、-148から-85)を見出している。そこで本研究では、これら領域の有無が与えるDNAメチルへの影響を調査することを目的として、一方の領域(-148から-85)のみを有する配列(64bp)と、35Sプロモーターからコア配列(-90)を除いた配列(35SΔcore)をシングルコピーで導入した組換えリンドウにおいて、DNAメチル化の頻度を比較した。その結果、64bpを導入したリンドウにおいても、de novoメチル化の誘導が確認された。しかしその頻度は、35SΔcoreを導入したリンドウの当該配列(-148から-85)のメチル化と比較して著しく低下したことから、高メチル化の誘導には上述の2領域が両方とも必要であることが示唆された。タバコに導入した35SΔcore-sGFPのsGFP mRNA発現は、通常の35Sプロモーターと比較して著しく抑制されていたことから、35Sプロモーターの転写活性化能はリンドウにおけるDNAメチル化の誘導に寄与しないことも示された。

Iwata Y, Ashida M, Hasegawa C, Tabara KMishiba KIKoizumi N (2017)
Activation of the Arabidopsis membrane-bound transcription factor bZIP28 is mediated by site-2 protease, but not site-1 protease.
Plant Journal 91:408-415 [PubMed]


2016年

Tanaka R, Amijima M, Iwata Y, Koizumi N, Mishiba KI (2016)
Effect of light and auxin transport inhibitors on endoreduplication in hypocotyl and cotyledon.
Plant Cell Reports 35:2539-2547 [PubMed] [SharedIt]
【解説】本研究では、暗所下における核内倍加を伴った胚軸伸長が様々な植物種の胚軸や子葉でも起こるかについて調べるとともに、TIBAによる核内倍加の抑制がどのようなメカニズムによって起こるのかについて、主にカイワレダイコンを用いたフローサイトメトリー解析により検証した。胚軸伸長と核内倍加の関係については、異なる5つの科に属する植物種で共通して認められた。一方、子葉では胚軸とは逆に暗所で核内倍加が抑制される傾向がみられた。カイワレダイコン芽ばえにTIBA処理を行った結果、ホウレンソウで報告した結果(Amijimaら、2014)と同様に、胚軸における核内倍加の抑制が観察された。また、別のオーキシン輸送阻害剤であるNPA(N-1-ナフチルフタラミン酸)およびHFCA(9-ヒドロキシフルオレン-9-カルボン酸)を処理したところ、核内倍加の抑制効果は限定された。TIBAのオーキシン輸送阻害以外の影響を確認するために、小胞輸送阻害剤であるBFA(ブレフェルジンA)およびアクチン重合阻害剤であるサイトカラシンDを処理したところ、核内倍加の抑制が観察された。これらの結果から、TIBAによる核内倍加の抑制機構は単にオーキシンの輸送阻害によるものではなく、TIBAが持つ多面的な阻害効果によってもたらされた結果である可能性が示唆された。

Iwata Y, Hayashi N, Tabara KMishiba KIKoizumi N (2016)
Tunicamycin-induced inhibition of protein secretion into culture medium of Arabidopsis T87 suspension cells through mRNA degradation on the endoplasmic reticulum.
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 80:1168-1171 [PubMed]

Nagashima Y, Iwata Y, Mishiba KI, Koizumi N (2016)
Arabidopsis tRNA ligase completes the cytoplasmic splicing of bZIP60 mRNA in the unfolded protein response.
Biochemical and Biophysical Research Communications 470:941-946 [ScienceDirect]

Okumura A, Shimada A, Yamasaki S, Horino T, Iwata Y, Koizumi N, Nishihara M, Mishiba KI (2016)
CaMV-35S promoter sequence-specific DNA methylation in lettuce.
Plant Cell Reports 35:43-51 [PubMed] [SharedIt]
【解説】我々はこれまでの研究で、リンドウ(Gentiana triflora × G. scabra)に導入したカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター配列に特異的なDNAメチル化を伴う遺伝子発現抑制現象を見出した。この現象はシングルコピーで導入された35Sプロモーターでも起こり、タバコやシロイヌナズナのようなモデル植物ではみられないが、リンドウ以外の植物種でもこのような現象が起こるかについては不明であった。そこで、35Sプロモーターを導入した組換え体で高発現が起こりにくいことが報告されているレタス(Lactuca sativa)に着目した。本研究では、レタスにおいてもリンドウと同様の発現抑制現象が起こるかを確認することを目的として、35Sプロモーター(35S-sGFP)がシングルコピーで導入された組換えレタスを作出し、DNAメチル化を伴った発現抑制の有無を調査した。その結果、レタスにおいても導入した35Sプロモーターのメチル化誘導と、それに伴うsGFP遺伝子の発現抑制が確認された。またこれまでの研究において、リンドウでは35Sプロモーター配列中にde novoメチル化が高頻度に生じる2ヶ所の領域が存在することを見出しているが、これら領域に含まれる配列を改変した35Sプロモーターをレタスに導入したところ、35Sプロモーターのメチル化がほとんど起きずに発現抑制がみられない系統が確認された。このことから、改変した配列がメチル化に関与している可能性が示唆された。


2015年

総説等

Iwata Y, Koizumi N (2015)
Membrane-bound transcription factors in plants: Physiological roles and mechanisms of action.
In: Daniel H. Gonzalez Eds., Plant Transcription Factors: Evolutionary, Structural and Functional Aspects, Elsevier, pp 385-394 [ScienceDirect] [Elsevier Store]

Nishihara M, Mishiba KI, Imamura T, Takahashi H, Nakatsuka T (2015)
Molecular breeding of Japanese gentians—Applications of genetic transformation, metabolome analyses, and genetic markers.
In: Jan J. Rybczyński, Michael R. Davey, Anna Mikuła Eds., The Gentianaceae-Volume 2: Biotechnology and Applications, Springer, pp 239-265 [Springer Link]


2014年

Nagashima Y, Iwata Y, Ashida M, Mishiba KI, Koizumi N (2014)
Exogenous salicylic acid activates two signaling arms of the unfolded protein response in Arabidopsis.
Plant & Cell Physiology 55:1772-1778 [PubMed]
【解説】小胞体内に蓄積した構造異常タンパク質を修復あるいは除去するための細胞応答を小胞体ストレス応答という。シロイヌナズナの小胞体ストレス応答のシグナル伝達経路に関わる重要な転写因子にbZIP28とbZIP60がある。これまでに、病原菌感染やサリチル酸を処理することで、小胞体シャペロンであるBiPを含む小胞体ストレス応答関連遺伝子の一部が誘導されることが報告されていた。さらに、サリチル酸による病害応答の重要因子であるNPR1や転写因子HsfB1がこれらの遺伝子の発現制御に関わるとされていたが、不明な点も多かった。本研究では、サリチル酸処理による小胞体ストレス応答関連遺伝子の誘導とbZIP28とbZIP60の関わりについて調べた。その結果、外生サリチル酸の処理によりbZIP28とbZIP60が活性化されることを見出した。さらに、これらの転写因子の活性化やBiP3を代表とする小胞体ストレス応答関連遺伝子の誘導は、NPR1やHsfB1ではなくbZIP60依存的に制御されていた。

Amijima M, Iwata Y, Koizumi N, Mishiba KI (2014)
The polar auxin transport inhibitor TIBA inhibits endoreduplication in dark grown spinach hypocotyls.
Plant Science 225:45-51 [ScienceDirect]
【解説】本研究は、ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)における暗所下の胚軸伸長と倍数性細胞の関係について調査した。明所および暗所で生育させたホウレンソウ胚軸の倍数性細胞の出現頻度をフローサイトメトリー解析により調査した結果、暗所において高次倍数性(32C)細胞が増加していることが確認された。さらに、倍数性の高い細胞ほど細胞長が増加していることが確認されたことから、高次倍数性細胞が暗所での胚軸伸長に寄与していることが示唆された。また、暗所下での胚軸伸長にはオーキシンが関与していることが知られているため、オーキシン輸送阻害剤であるTIBAを処理したホウレンソウの胚軸の倍数性細胞について調査した。その結果、TIBA処理を行った胚軸の高次倍数性細胞は明確に減少した。一方、オーキシン輸送阻害剤のNPAを処理した場合ではTIBAでみられた顕著な効果は認められなかったことから、TIBAの効果はオーキシン輸送阻害以外の生理作用によるものである可能性も考えられた。


2013年

Miyagawa Y, Ogawa J, Iwata Y, Koizumi N, Mishiba KI (2013)
An attempt to detect siRNA-mediated genomic DNA modification by artificially induced mismatch siRNA in Arabidopsis.
PLOS ONE 8:e81326 [Open Access]
【解説】“RNAキャッシュ”とは、hothead変異体で観察された非メンデル遺伝を説明するための仮説のひとつで、親から受け継がれたRNA分子を鋳型としてゲノムDNA配列の修正がなされる、というものであるが、仮説を裏付ける研究結果は得られていない。本研究では、このようなRNA分子を鋳型としたDNA修復が本当に起こり得るものなのかを検証することを目的として、ゲノム配列とのミスマッチを含む二本鎖RNAを人為的に誘導する実験を行った。変異誘導の標的として、一塩基置換により除草剤クロルスルフロンへの耐性を獲得することが知られているアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子を選定し、この塩基置換を含んだ二本鎖RNAを発現させることにより、ゲノム上のALS遺伝子配列の改変が起こるかを検証した。一塩基置換を導入したALS cDNA部分配列の逆位反復配列を持つDEX誘導型RNAiベクターをシロイヌナズナに導入し、T-DNAが1コピー挿入された組換え体を得た。ALS遺伝子のRNAiにより、DEXを含む培地上で組換え体は枯死したが、この培地にアミノ酸を添加した場合には生育阻害が回避された。またDEX処理により内在ALS mRNAが減少し、変異型ALS siRNAの蓄積が検出された。この組換え体をDEXとアミノ酸添加培地で生育させた後に順化し、自殖後代(約10万個体)をクロルスルフロンにより選抜したが、耐性個体は得られなかった。さらに組換え植物よりカルスを誘導し同様の選抜を試みたが、DEX処理の有無による耐性カルスの出現頻度に差異はみられなかった。

Iwata Y, Takahashi M, Fedoroff NV, Hamdan SM (2013)
Dissecting the interactions of SERRATE with RNA and DICER-LIKE 1 in Arabidopsis microRNA precursor processing.
Nucleic Acids Research 41:9129-9140 [NAR]

Mishiba KI, Nagashima Y, Suzuki E, Hayashi N, Ogata Y, Shimada Y, Koizumi N (2013)
Defects in IRE1 enhance cell death and fail to degrade mRNAs encoding secretory pathway proteins in the Arabidopsis unfolded protein response.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110:5713-5718
[PNAS]  [プレスリリース(PDF)]
【解説】小胞体ストレス応答 (UPR) は、小胞体において折り畳みに失敗したタンパク質が蓄積することを回避するための細胞応答で、真核生物に広く保存されている。IRE1 は bZIP 型転写因子の細胞質スプライシングを介して UPR の情報伝達系を活性化させる。最近、シロイヌナズナの IRE1 が bZIP60 の mRNA の細胞質スプライシングに関わることが明らかになった。今回の研究では、2つの IRE1 遺伝子を欠損したシロイヌナズナは小胞体ストレス下で野生型や bZIP60 欠損シロイヌナズナよりも細胞死を起こしやすいことが判り、IRE1 が細胞質スプライシング以外の機能を持つことが示唆された。マイクロアレイデータの解析と定量的 PCR の結果から、分泌経路のタンパク質をコードする mRNA が、ツニカマイシン、DTT および熱により IRE1 依存的に分解されることが判明した。UPR の際に見られる小胞体に局在する mRNA の分解は、動物で報告された IRE1 依存的 RNA 分解と同様の分子機構であると考えられた。アクチノマイシン D により転写を抑えた状態でおこなったマイクロアレイと Gene Set Enrichment Analysis から、分泌経路のタンパク質をコードする mRNA が IRE1 依存的 RNA 分解により広範囲に分解されることが示された。また、IRE1 が欠損すると HSFA2 などの細胞質タンパク質応答に関わる遺伝子がツニカマイシンにより誘導されたことから、UPR と CPR の関連が示唆された。

RIDD


2012年

Iwata Y, Nishino T, Iwano M, Takayama S, Koizumi N (2012)
Role of the plant-specific endoplasmic reticulum stress-inducible gene TIN1 in the formation of pollen surface structure in Arabidopsis thaliana.
Plant Biotechnology 29:51-56 [J-STAGE]
【解説】Tunicamycin induced 1 (TIN1)はシロイヌナズナから単離された植物特異的な小胞体ストレス応答遺伝子である。通常の栽培条件ではTIN1は花粉特異的に発現しており、その遺伝子破壊株では花粉表面の構造に異常が求められたことから、TIN1は花粉の発達に関与していることが示唆された。

総説等

Iwata Y, Koizumi N (2012)
Plant transducers of the endoplasmic reticulum unfolded protein response.
Trends in Plant Science 17:720-727 [ScienceDirect]
【解説】小胞体におけるフォールディング異常に対応するためのunfolded protein response(UPR)における情報伝達では、ストレスセンサーであるIRE1による細胞質スプライシングを介して転写因子が活性化される。シロイヌナズナ及びイネでIRE1の標的が同定されたことから、植物でのUPRの理解が進んだ。シロイヌナズナIRE1の標的であるbZIP60 mRNAの細胞質スプライシング機構を酵母や動物のものと比較するとともに、植物のUPRの情報伝達を俯瞰し、その生理現象との関わりについて述べる。

小泉 望 (2012)
遺伝子組換え植物をめぐる国内外の状況
月刊バイオインダストリー 29(8):5-11 [LINK]
【解説】遺伝子組換え技術によって品種改良された植物(GM 植物)は世界で広く栽培され、日本が輸入する主要作物の半分はGM 植物と推定される。大量消費の一方で、GM 植物に対する理解は進まず、産業利用を見据えた研究開発は限られている。GM 植物をめぐる国内外の状況を概説する。


2011年

Nagashima Y, Mishiba KI, Suzuki E, Shimada Y, Iwata Y, Koizumi N (2011)
Arabidopsis IRE1 catalyses unconventional splicing of bZIP60 mRNA to produce the active transcription factor.
Scientific Reports 1:29 [Open Access] [おすすめのコンテンツ]
【解説】酵母、動物では小胞体ストレス応答と呼ばれる現象において、センサータンパク質IRE1により転写因子をコードするmRNAの細胞質スプライシングが起こり、活性型の転写因子が合成されることが知られていた。一方、植物の小胞体ストレス応答には、膜結合型転写因子bZIP60が関与することが知られていたが、その標的は不明あった。この論文では、シロイヌナズナの小胞体ストレス応答において、IRE1による23塩基の細胞質スプライシングの結果生じたbZIP60 mRNAから活性型bZIP60タンパク質が合成されることを明らかとした。酵母や動物の場合はスプラシイングの結果、活性化ドメインを持った分子量の大きな転写因子が合成されるのに対し、植物ではスプラシイングの結果、分子量が小さなタンパク質が合成される。活性化される前のbZIP60はすでに活性化ドメインを持っており、活性化はbZIP60が小胞体膜から核への移行することで可能になると考えられた。

IRE1_fig1

bZIP60_fig2

 

 

 

 

 

 

Tanaka Y, Nakamaura S, Kawamukai M, Koizumi N, Nakagawa T (2011)
Development of series of gateway binary vectors possessing a tunicamycin resistance gene as a marker for transformation of Arabidopsis thaliana.
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 75:804-807 [J-STAGE]

Yamasaki S, Oda M, Koizumi N, Mitsukuri K, Johkan M, Nakatsuka T, Nishihara M, Mishiba KI (2011)
De novo DNA methylation of the 35S enhancer revealed by high-resolution methylation analysis of an entire T-DNA segment in transgenic gentian.
Plant Biotechnology 28:223-230 [J-STAGE]
【解説】リンドウに導入した外来遺伝子における発現抑制の標的配列を検証するために、導入したT-DNAの全領域を対象とした詳細なDNAメチル化解析を行った。その結果、高頻度にde novo DNAメチル化が起きている領域が35Sエンハンサー領域中に2ヶ所存在した。これらの領域において、リンドウ内在の核因子が共通して結合する配列を含むことが、EMSAにより示された。

Yamasaki S, Oda M, Daimon H, Mitsukuri K, Johkan M, Nakatsuka T, Nishihara M, Mishiba KI (2011)
Epigenetic modifications of the 35S promoter in cultured gentian cells.
Plant Science 180:612-619 [PubMed] [Recommended by Faculty of 1000]
【解説】形質転換リンドウの懸濁培養細胞を用いて、DNAメチル化およびヒストン修飾と遺伝子発現抑制の関連性について調査した。懸濁培養細胞は、同一のT-DNA挿入イベントに由来する以下の2種類を誘導して用いた。(1):形質転換細胞の選抜時に得られたカルスを、液体培地に誘導して懸濁培養細胞を得た(初代培養細胞)。(2):(1)で誘導されたカルスから再生した形質転換植物体より再度カルスを誘導し、懸濁培養細胞とした(再誘導培養細胞)。これらの培養細胞について導入した35S-sGFP遺伝子の蛍光を調査したところ、初代培養細胞ではGFP蛍光が観察されたが、再誘導培養細胞ではGFP蛍光は見られなかった。Bisulfite法で35Sプロモーター領域のDNAメチル化を解析したところ、再誘導培養細胞と形質転換植物体において高頻度のメチル化が確認されたが、初代培養細胞では、DNAメチル化が殆ど生じていなかった。クロマチン免疫沈降(ChIP)法により、35Sプロモーター領域におけるヒストンH3のアセチル化、4番目のリジン残基(Lys4)のジメチル化、および9番目のリジン残基(Lys9)のジメチル化を比較した結果、再誘導培養細胞は初代培養細胞と比較してアセチル化が減少し、逆にLys4とLys9のジメチル化が増加していることが示された。さらにDNAメチル化阻害剤およびヒストン脱アセチル化阻害剤をそれぞれ処理したところ、DNAメチル化阻害剤処理でのみGFP蛍光の復帰が確認された。以上の結果より、リンドウにおける外来遺伝子発現抑制は、35Sプロモーター領域における高頻度DNAメチル化およびヒストンの脱アセチル化に起因すると思われるが、脱アセチル化の解除のみでは発現抑制が回復しないことが示唆された。

総説等

Iwata Y, Lee MH, Koizumi N (2011)
Analysis of a transcription factor using transient assay in Arabidopsis protoplasts.
Methods in Molecular Biology 754:107-17 [PubMed]

小泉 望、岩田雄二 (2011)
植物における小胞体の品質管理 病原菌認識機構の解析から見えてきたもの
化学と生物 49:88-91