研究内容

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環境ストレス応答(稲田)

野外で育つ植物は、天候の変化や病虫害の攻撃に由来する環境ストレスに日々さらされています。個体全体を統合する脳や神経などの器官、細菌を撃退する免疫細胞のような特殊に分化した細胞を持たない植物は、このような環境ストレスに対して個々の細胞レベルで応答します。本研究室では、ライブイメージングや分子遺伝学などさまざまな手法を用いて、植物の環境ストレス応答機構を細胞レベルで明らかにする研究を進めています。

1. アクチン脱重合因子の機能解析による植物の環境ストレス応答機構の解明

真核生物の細胞内に張り巡らされているアクチン繊維は、細胞の形や伸長の制御、細胞内の物質輸送に働いています。また最近では、細胞核内のアクチン繊維の役割にも注目が集まっています。私たちは、アクチン繊維の構造や動態を制御する因子、アクチン脱重合因子(ADF)に着目し、その機能解析を通して植物の病害応答、環境ストレス応答の機構を明らかにする研究を行っています。

アクチン繊維の脱重合・切断を担うADFのシロイヌナズナ変異体はうどんこ病に対して抵抗性を示す。

 

2. 植物の膜交通系の解析による病害微生物との相互作用機構の解明

植物に感染する一部の糸状菌病原体は、宿主となる植物の細胞の中に侵入して菌糸を伸ばします。このとき、植物細胞の膜系を含む細胞内構造は大きく変化し、またその性質を変えることにより、病原体の撃退や受け入れに働きます。植物の膜交通系に焦点をあてた研究により、植物と病原体との相互作用機構を理解するとともに、その知見を病害防除の新技術開発に活かしたいと考えています。

植物の膜交通制御因子ARA6はうどんこ病菌の感染菌糸を取り囲む膜系に局在し、うどんこ病の感染を助けている。

 

3. 細胞内温度イメージングによる細胞応答機構の解析

温度は生物にとって非常に重要な物理量ですが、細胞という非常に狭い空間における温度分布や温度変化についてはあまりわかっていません。私たちは、新しく開発した蛍光温度イメージングの技術を使って、温度という新しい観点から細胞の応答、環境応答の機構を理解する研究を進めています。

蛍光温度イメージングによる動物培養細胞内の温度分布。